自然の恵みを楽しむ遊牧民族の暮らし
『食文化』
主に遊牧民族として活動してきたカザフスタンの特徴は文化や食事にも現れています。同じ遊牧民族である隣のキルギスなどの料理ともとてもよく似ていますが、羊、牛や馬肉をつかった料理が多く(地域によってはラクダ肉も)、中でも手づかみで食べることからベシュバルマク(5本の指)とよばれる羊肉を煮込んだ麺料理は代表的な料理の一つです。
また馬乳やラクダのミルクなどの乳製品も豊富です。


お客さんをおもてなしする文化も強いカザフスタンでは歓迎の意を込めてこれらの肉料理がふるまわれます。カスピ海に面するマンギスタウではカスピ海でとれるチョウザメをつかった魚介系のベシュバルマクも食べることができます。一方、ロシア料理、ウイグル料理、ドゥンガン料理なども広く食べられています。
コーヒーよりも紅茶の文化が根強く、フルーツなどを加えたティーやハーブティーの種類も豊富。お客さんがきたときや、家族・親戚と集まったときなどはティーと蜂蜜等でもてなされます。小麦粉を揚げたボルサックといわれる伝統的なお菓子も美味。塩漬けされたチーズをボール状にしたクルトといわれる軽食も、遊牧民にとっては非常に貴重な保存食として食べられてきました。

『スポーツ・娯楽』
ウィンタースポーツもさかんなカザフスタン。
記憶に新しい、2026年ミラノ・コルティナオリンピックの男子フィギュアスケートシングルで金メダルを獲得したミハイル・シャイドロフもカザフスタン出身です。
アルマティの街中から30分少しでアクセスできるスキー場やスケートリンクはシーズン中多くの人で賑わいます。


また東のアルタイ地域にもスキー場がいくつかあり、冬はマイナス20度近くにもなる極寒のなかでのスキーを楽しむ市民も。アイスホッケーも国民的なスポーツの一つで、その観戦には子どもから大人までが熱狂し、特に冬の過酷な寒さのなかで楽しめる娯楽の一つでもあります。またバレエやオペラ鑑賞も身近にあるため、劇場に気軽に足を運び芸術にふれることもできます。


一方夏はトレッキングや登山、乗馬もさかん。少し登ると標高3000m級の山々がひろがり息もあがりますが、厳しいピークが連なる壮大な天山山脈などの絶景が望めます。
『アルタイ山脈の自然療法』
東側のアルタイ山脈の最高峰である「ベルーカ山」は母なる山として昔から崇められており、現地住民からはその周辺地域は神聖な土地として認知されてきています。希少な高山植物や動物が生息し、2000種以上にもおよぶハーブが自生しているとされ、昔から民間療法として調合されてきた文化も根強く、今でもこの地域では身体の不調や病気などに応じてハーブによる療法がなされています。

また、特に大きな角を持つ鹿(マラル)の角を用いたパントセラピーとよばれる療法はここ東カザフスタンの地が発祥地であり、飲料として、または皮膚から摂取することで強い免疫機能を得られるとされ、体を若返らせ消化器系や神経系の機能を向上させるともいわれており、これらの療法に特化した施設が夏や冬を通して国内外から人気の場所となっています。


『厳しい環境で育つキャメルソーン(らくだ草)』
旧首都でもある南部のクズルオルダはアラル海が干上がってしまい、かつてあった港も今ではなくなっていますが、砂漠が広がっており、ラクダのウールや乳製品が特産です。

この極めて乾燥した過酷な環境に適応した「らくだ草(キャメルソーン/Camelthorn)」もこの地域のユニークな植物です。固く丈夫でトゲ(thorn)のあるこの草をものともせず食べるのはラクダと羊くらいで、彼らにとっては栄養分の補給とともに、解毒作用のある最適な食べ物となっています。


このラクダ草は地下5~10mほど根をのばし、深層地下水を吸い上げて生きており、その地下水にはミネラルがたっぷりとふくまれています。わずかな花期にはその栄養が凝縮され、小さなピンク色の花を咲かせ、その花から採れる蜂蜜がキャメルソーンはちみつです。現地では昔からこのラクダ草の茎や葉を煎じて飲む習慣もありました。羊肉などの脂の多い遊牧民族の食事による消化器系の不調への対応や風邪など身体の不調があった場合に飲むようにいわれて育ったと聞きます。最近では糖代謝のサポートにつながるという効能が注目されつつあります。
.jpg)
北から南、東から西まで広い国土に多様でユニークな環境や自然、文化が広がるカザフスタン。日本にはまだ広く知られていない国ですが、その魅力はまだ何かを秘めているようです。ぜひそんなカザフスタンに一度訪れてみてください。
著者:戒能 彩
茨城県つくば市出身。
2017年より国際協力機構(JICA)等で南アジア、中央アジア地域のODA事業に従事。
2022年から2年間カザフスタン(アスタナ)に、2024年に半年ほどキルギス(ビシュケク)に駐在。